ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

コラム:本×音楽のすすめーー読みながら聴きたい曲、聴きながら読みたい本

秋といえば、そう、読書の秋。

ということで。(もう冬になりつつあるんですがね…)

 

今回は少し趣意を変えて、本×音楽の組み合わせをいくつかピックアップしてみました。読みながら聴きたいアルバム、聴きながら読みたい本、の組み合わせです。本のチョイスが自分の好みに偏りまくってるのですが、どうかお許しを。

 (※音楽アーティスト / アルバムタイトル × 本の筆者 / 本のタイトル、の順となっています)

 

 

1. Radiohead / Hail to the Thief × ジョージ・オーウェル / 1984

Hail to the Thiefの幕開けを飾る強烈なロックナンバー“2+2=5”のタイトルの由来は、言うまでもなくジョージオーウェルの『1984年』におけるフレーズに由来している。

最終的に、党は二足す二は五であると発表し、こちらもそれを信じなくてはならなくなるだろう。…(中略)...そして恐ろしいのは、党の考えに同調しないために殺されることではなくて、党の考えの方が正しいかもしれないということ。結局のところ、二足す二が四であることをいかにして知るというのだ?...(中略)...自由とは二足す二が四であると言える自由である。その自由が認められるならば、他の自由は全て後からついてくる。*1

トムヨーク流の"2+2=5”は、楽曲のPVにおけるなんともショッキングな映像と共に、管理社会、全体主義批判と同時に環境破壊、グローバリズム、資本主義批判を展開。『1984年』におけるジョージオーウェルの批判の矛先は、全体主義共産主義であり、これらは現在ではすっかり影響力を失ったイデオロギーである。しかしながらトムヨークが”2+2=5”で示したこれらの批判は、今もなお、オーウェルの批判が有効であることを、資本主義やグローバリズムへと形を変えて管理社会、監視社会が存在していることを示唆している。その意味で、『1984年』の現代的意義を考えつつ本書を読むのに、Hail to the Thiefはうってつけの一枚だ。

 

2. Manic Street Preachers / This Is My Truth Tell Me Yours × アーネスト・ヘミングウェイ / 誰がために鐘は鳴る

 マニックスが金字塔Everything Must Goの次にリリースしたのがこの”This Is My Truth Tell Me Yours”。ヘミングウェイとの関係は、このアルバムのリードシングル”If You Tolerate This Your Children Will Be Next”(邦題:輝ける世代のために)が第二次世界大戦の前哨戦ともなったスペイン内戦について歌った曲であるという点にある。まさにこの曲のタイトル(“もし君がこれを黙認すれば、今度は君の子供達の番だ”)は、反ファシズム勢力によって用いられたスローガンで、当時スペインで勢力を拡大していったフランコ独裁に対する人民戦線側の想いが現れている。『誰がために鐘は鳴る』は、そんな反ファシスト軍として戦うロバートとマリアの恋愛模様を描いた戦争物語。ロバートは、ゲリラ攻撃に身を投じるわけだが、こうしたスペイン内戦の実情は、マニックスの本楽曲の歌詞にもある”if I can shoot rabbits, then I can shoot facists”という強烈なフレーズ(実際に当時の反ファシスト軍が用いた言葉らしい)からも伺える。マニックスヘミングウェイ、全く共通点がなさそうな二者だが、スペイン内戦という共通項に注目しながら読み聴きすると面白い。

 

3. Joy Division / Closer × キルケゴール / 死に至る病

「死」について言及することなしにJoy DivisionのCloserを理解することはできない。陰鬱でゴシックな世界観に彩られたCloserが発売されたのは、イアンカーティスが自殺した2ヶ月後。その死の事実を知った上で本作を聴くと、イアンカーティスが吐き捨てる「生というものへの絶望感」や「強烈な自己否定」が生々しいリアリティをもって迫ってくる。こうした生という有限なものへの不安を見事に分析した思想家は、キルケゴールを置いて他にいないだろう。『死に至る病』は「死に至る病とは絶望のことである」という強烈な文言から始まる。

人間はあれこれの可能性を実現したり、それに挫折したりして生きる。しかし、そのプロセスがどうあれ、最終的には人間は、<死>という絶対的な不可能性につきあたることになる。絶望とはそういう意味で「死に至る病」であり、底の底では一切の可能性の終局的な不可能性として存在しているのだ。*2

実際、"Closer"を聴きながらキルケゴールを読んだら、両者とも非常に暗い内容なので、自分自身が病的な感じになってしまいそうなので私は試していないのですが(笑)、深く暗闇に沈みながら思索に耽りたい人は是非トライを。

 

4.Chance the Rapper / Coloring Book × アラン / 幸福論

なんだか暗い雰囲気の本が続いてしまったので、最後は気分を切り替えて「幸福」を描いたこの二人を。Chance the Rapperといえば、多幸感をゴスペルサウンドにのせてシカゴの希望を歌う現在のシーンの最重要人物の一人。彼は音楽活動に留まらず、シカゴ社会をより良いものにするため様々な活動を行っている*3。そんなチャンスの多幸感満載のサウンドを聴きながら、「幸福って何だろう」と、改めて考え直してみるのもいいかもしれない。

幸福は見た目にも美しい。それはもっとも美しい観物である。(92章 幸福になる義務) *4

ここではアランの『幸福論』を挙げたが、他にも幸福について考えた哲学者はたくさんいて、ヒルティ、ラッセルの幸福論と併せて三大幸福論と呼ばれたりすることも。なので、アランに限らず様々な著作を読んでみては。

 

 

ということで、本×音楽の組み合わせで四つ、考えてみました。

「読書の秋」にかけて秋のうちにアップしようと思ったら、思いついてから一か月以上かかってしまいました…まだ紅葉が見ごろなのでまだ秋って言って大丈夫だよね?そうだよね?と言い訳を考えつつ、、、

ではでは。

 

*1:ジョージ・オーウェル(著), 高橋和久(訳), 2009『1984年[新訳版]』pp. 124-125

*2:竹田青嗣, 1992『現代思想の冒険』pp. 148-149

*3:詳しくは、拙稿怒りを祈りに転化したシカゴの光ーDisc Review : Chance the Rapper / Coloring Book - ゆーすPのインディーロック探訪参照。

*4:アラン(著), 白井健三郎(訳), 1993 『幸福論』p.285