ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

変わる思いと変わらないメロディー―Live Report : American Football 2017 June 6 @ Blitz

変わる思いと変わらないメロディー

Live Report : American Football @akasaka blitz(2017/06/07)

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 1999年に1stアルバムをリリースしたAmerican Footballは、もうその時すでに活動を終えていました。しかし、この1stアルバムは徐々にゆっくりと時間をかけて傑作ともてはやされるようになり、ついに彼らは、"伝説のエモ・ポストロックバンド"と形容されるにまで至るのです。実際、彼らがシーンに与えた影響は大きく、キンセラ兄弟はCap’n Jazz, Owen, Joan of Arc等々、他のバンドでの活躍も相まってエモ・ポストロックシーンの最重要人物という評価が一般的です(もちろん今も)。そんな彼らが2014年にリユニオンを果たし、2016年には17年ぶりにニューアルバムをリリースしてワールドツアーに出るというもんだから、もうこれは奇跡といっても過言ではないでしょう。ちなみに日本には2015年も来日していたのですが、ニューアルバムのリリース後としては、今回が初の来日となっています。
昨年リリースの2ndアルバムから"My Instincts Are The Enemy"。本ミュージックビデオは日本で撮影された。とりあえず吉祥寺のサンロードはわかりました(笑)
 
 そんな彼らの1stアルバムは、繊細なアルペジオと軽やかなドラムから成り、静寂と美しさを兼ね備えた作品でした。そして、その流れる旋律は非常に感傷的で、どこか懐かしいノスタルジックな風景を思い起こさせるのです。ーでは、この"ノスタルジー"なアルバムの音は、今、どのように鳴らされるのか。結論から言うと、"17年前のアメフトの音"ではなく、鳴らされていた音は紛れもなく、"2017年、今のアメフトの音"でした。彼らの曲にあるノスタルジックな要素を、その当時の風景から想起するのではなく、現在の風景から想起したのです。17年前に書いた歌詞が、今の彼らの心情に合っているかどうかというと、やはりそうではないわけで。それでも再結成して昔の曲をやる意味はどこかにあって、それが今の思いを曲に乗せることに現れてるのではないか、と。
 さらに、印象的であったのがリズム隊の軽やかなリズム進行です。スティーヴラモスのドラミングは正確で力強く、そのリズムに時折重なり合うタンバリンやマラカスの響きが演出するピークタイムは観衆の熱量をさらに引き上げていました。このリズム隊にマイクキンセラとスティーヴホームズの繊細なギターが加わることで、より美しいメロディーを引き立たせることに成功しているのではないでしょうか。
アメフトの代表曲にしてエモ・ポストロックの大名曲との評価が高い"Never Meant"。アメフトを知らなくてもこの曲なら聴いたことがある人も少なからずいるのでは。
 
 こうしたアメフトの姿からは、エモ・ポストロックといったジャンルの形にとらわれることのないバンドの形を追求したアメフトの20年間が詰まっていました。だから、最後に少し勿体をつけて演奏した"Never Meant"はなんだかさらっとしていて、幾許かの物足りなさと、彼らのこれからにどこか期待してしまう自分がいるのでした。
 

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 ライブ時に撮った写真にちょっと文字入れてみたらそれっぽくなったので載せときます(笑)ではでは。