ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

2010年代ベストアルバム50選 PART2:TOP 50 ALBUMS OF 2010s [40-31]

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※前回記事(50位から41位)はこちら

indiemusic.hatenadiary.jp

 

どうもゆーすPです。

前回に続き今回は40位から31位です。  

 

[TOP 50 ALBUMS OF 2010s [40-31]]

40 Janelle Monae / Dirty Computer (2018)

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ジャネールモネイはついにアンドロイドの鎧を捨て去り、自らのアイデンティティを高らかに歌い上げた。本作のテーマの一つとなっているのは性をめぐる自己表現。ファレルを迎えたI Got The Juiceや女性器を模したPVが話題となったPynkといった楽曲からもそのことは明らかであり、実際にジャネールは本作のリリース前に自身がクィアであることを宣言している。

一方で彼女が本作で高らかに歌い上げるアイデンティティはセクシャルな側面に留まらない。人種、民族、国籍など、様々な問題化するマイノリティのアイデンティティのそれぞれに光を当て、それらの希望を高らかに、そしてポジティブに歌っている。その意味で、自分らしく自由に生きることの素晴らしさがひしひしと伝わる一枚だ。

 

39 Team Me / To the treetops (2012)

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北欧の煌びやかなイメージを一身に見に纏い、ピアニカ、ビブラフォンなどが楽しげに共演しあう。ノルウェーが生んだ6人組は、北欧の街から世界中を魅了した。

シンセポップのキャッチ―なメロディーからBoards of Canadaを彷彿とさせるヒップホップライクなビートへとなだれ込む8分超のオープニングトラックRiding My Bycicleこそ実験的意匠が感じられるものの、2曲目Show Meから、とにかく多幸感満載の可愛らしく優しいメロディーが満載である。

2014年に開催予定だったHostess Club Weekenderでライブを見られるのを楽しみにしていたのだが、同イベントは中止となり、その後Team Meは解散。もう彼らを見ることはできないのではないかと思っていた。しかしながら何と昨年2月にカムバックを発表。新曲もリリースしており、ついに今年6年越しにライブを見ることができるのでは…?とまだ来日公演すら決まっていないのに今からワクワクしている。

 

38 The Pains of Being At Pure Heart / Belong (2011) 

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The Pains of Being Pure At Heartほどバンド名がその音楽を体現しているバンドはなかなかいない。瑞々しくフレッシュなギター、疾走感のあるメロディー、そして感情をストレートに歌うリリック、そのすべてが「純粋であることの痛み」を我々に教えてくれる。

1stアルバムと"Belong"の違いは、色彩溢れるジャケット写真からして明らかである。1stアルバムにおいて比重を占めていたギターのリヴァーブとディレイはよりクリアな音像へと変化し、よりポップな楽曲に仕上がっている。「僕たちのサウンドは〈シューゲイザー〉とか〈ノイズ・ポップ〉とかいろんなふうに呼ばれているけど、僕たち自身は〈ポップ〉であることがいちばん重要だと思ってるんだ」*1という彼らの発言はこうした変化を如実に物語っている。

ペインズは、ノイジーでドリーミーな楽曲を志向しているという点において、Ringo Deathstarrやexloversなどのドリームポップバンドと多くの共通点を有している。彼らはMy Bloody Valentine以降のシューゲイザーの一つの可能性を見出した。その意味で、マイブラLovelessから四半世紀以上のギャップがあるものの、シューゲイザーの10年代的意義を取り戻すことに貢献したのである。ただ、ペインズらは、もはや下を向いていない。耽美的で内向的なマイブラシューゲイザーを前を向いて捉え直すことで、そのポジティブな意味を付け加えることに成功したのである。

 

37 Disclosure / Settle (2013)

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ロンドン出身のエレクトロデュオDisclosureはデビューアルバムにしてイギリスのエレクトロシーンの教科書的な作品を作り上げてしまった。UKのハウスシーン、特にロンドンのアンダーグラウンドシーンの伝統を踏襲したソウル/R&Bミュージックを通過した2ステップ/ガラージの影響を色濃く感じさせる楽曲陣は、アルバムを貫くアーバンな雰囲気を醸成している。他方でSam SmithやAlunaGeorgeといった若手アーティストをフィーチャーすることで、ポップシーンにもアプローチを仕掛けることに成功し、申し分のないポピュラリティーを獲得するに至った。

伝統的なUKエレクトロをロンドンのポップシーンの現在地と結びつけたDisclosureは、アンダーグラウンドシーンからついにはEDMの祭典ウルトラミュージックフェスティバル、さらにはアメリカでの成功の象徴マディソンスクエアガーデンへと飛翔した。彼らは伝統と革新、アンダーグラウンドとメジャー、この二つの軸を自由に動き回り、多様なシーンから愛される存在となったのである。

 

36 Drake / Nothing Was The Same (2013)

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10年代のキング・オブ・ポップの名をほしいままにしたのは、嫉妬深く未練がましい一人の男だった。ドレイクは、ポップスターが携えるべき必要条件を全く以って新しいものに取り替えてしまった。マーク・フィッシャーの言葉を借りれば、そこでは既に金、女、名声はもはや当たり前のもの、すでに手に入れられたものとして存在し、それらを手に入れてもなお不安が付き纏うという人間の繊細なリアルが描かれているのである*2

ドレイクの繊細さはアルバムのサウンドにも見事に表現されている。アルバム全体に通底する電子音・ピアノ主体のミニマルなトラック、Samphaの起用に見られるようなインディーR&Bへの嗅覚、これらは彼の心情に寄り添うのみならず、彼の卓越した音楽的センスを証明している。チリ―・ゴンザレスやハドソン・モホークの起用は、彼がメインストリームのポップミュージックの中でも優れたセンスの持ち主であることを印象付ける。

ドレイクの天下が終わろうとも、彼が音楽シーンにもたらしたパラダイムシフトがなかったことになることはないだろう。マチズモ的ポップ/ヒップホップシーンに繊細さ・未練がましさを持ち込んだドレイクの功績は、アイデンティティの時代であった2010年代の重要なランドマークの一つとして、後世に語り継がれるに違いない。

 

35 Arcade Fire / Reflektor (2013)

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2013年は、2000年代前半~中盤に劇的なデビューを飾ったロックバンド達にとって、運命の一年となった。Arctic Monkeysアメリカンなロックンロールへと舵を切り、Yeah Yeah Yeahsは音楽性を拡大させカオスなフィールドへと歩を進め、Franz Ferdinandはキャッチ―なダイナミズムへと原点回帰し、それぞれ10年代におけるプレゼンスを維持した。

Arcade Fireにとってもまた、2013年は大きなターニングポイントとなった。2010年にリリースした"The Suburbs"でグラミー賞受賞バンドの座にのぼりつめたArcade Fireは、ダンスパンク、カリビアン・ミュージックを参照し、より肉体的なリズムを探求した。ダンスパンクをけん引してきたジェームス・マーフィーをプロデューサーに迎えた本作は、コーラスとしてデヴィッド・ボウイが参加しているオープニングトラック"Reflektor"に顕著なように、これまでの意匠を脱ぎ捨てた実験的な作品となっている。同曲は7分を超える長尺で、グルーヴィなリズム隊が徐々に絡み合って高揚感を生み出していく、"Station to Station"期のボウイを彷彿とさせるナンバーだ。

今思えば、インディーロックを代表する存在となったArcade Fireのもとにジェームス・マーフィーとデヴィッド・ボウイが集結したことは、音楽史のエポック・メイキングな出来事だったのかもしれない。大陸ヨーロッパ的な硬派なファンクサウンドとニューヨークのダンスパンクとカリビアン・ミュージック由来のリズムが出会うことで、本作はこれ以上ないユニークさを兼ね備えた傑作となったのである。

 

34 LCD Soundsystem / This is Happening (2010)

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"This is Happening"は、フェアウェルアルバムであると同時に、LCD Soundsystemとダンスパンクのすべてが詰まったジェームス・マーフィーの集大成だ。見事な曲展開で一気にLCD Soundsystemの世界へ引きずり込むDance Yrself Clean、キャッチ―なポップナンバーDrunk Girls、彼らの十八番ともいえるファンキッシュなエレクトロナンバーOne Touchといったアッパーでダンサンブルな楽曲から、レトロな音風景を想起させるI Can Changeや聴く者を優しく包みこむHomeまで、多様な楽曲が目白押しである。

ジェームス・マーフィーの志向するダンスパンクは、サウンド的には先鋭的でアグレッシブなものであるが、彼がそんなサウンドに乗せたメッセージには優しさと包容力がある。難解なインディーミュージックを好む変わり者も、普段はヒットチャートしか聴かない者も、皆ひっくるめてダンスを楽しませてくれるような包容力が、マーフィーの音楽には秘められているのだ。

 

33 Foster the People / Torches (2011) 

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Foster the Peopleが目指したこと、それは、誰もが純粋に楽しめるポップミュージックを作ること、ただそれだけだった。こう書いてしまえばそんなの簡単じゃないかと思う向きもあるかもしれない。だが「多様性は豊かさである」とオバマが高らかに宣言し、一方で「ドイツにおいて多文化主義は完全に失敗した」とメルケルが正直に話した2010年代の混沌とした世界において、この「誰もが」楽しめる音楽を志向することは決して簡単なことではなかった。

Foster the Peopleがこの試みを成し遂げる上で、最大の障壁はピッチフォークが作り上げたインディーイズムであった(もっともFoster the Peopleはこれを敵とみなしていなかったが)。ピッチフォークとUSインディーの結婚は、ベッドルームミュージックを世界へと羽ばたかせることに見事に成功したが、一方で難解で閉塞的な音楽を至上とする価値観を生み出してしまった。アメリカのリスナーは細分化し、「Kurt Vileを知っているがレッチリを知らない」というような層を生み出した。

Foster the Peopleは、細分化したアメリカのリスナーに、誰もが口ずさめる"Pumped Up Kids"の口笛で、キャッチ―に繰り返す"Don't Stop"のフレーズで、リズム隊による軽快なドラミングが耳に残る"Miss You"で、見事にアプローチした。私もすぐにその虜となった。"Pumped Up Kids"は2011年に最も聴いた曲の一つとなった。

しかしながら、Foster the Peopleの魅力はただキャッチ―であることだけではない。"Pumped Up Kids"は、軽快な口笛を響かせながら、「イカした靴を履いてるお前ら、逃げた方が良いぞ、俺の銃弾がお前らを打ち抜く前に」と、親からネグレクトに遭った少年が銃を振り回す様子を歌っている。実は、明るいキャッチ―な楽曲を聴いている限りではおおよそ予測できないような暗いテーマが歌われているのである。

私がFoster the Peopleを長く愛聴してきたのは、後者のような事情、つまり、一聴しただけではわからないようなテーマが隠されているからであった。こうした一筋縄ではいかない魅力こそ、Foster the Peopleが長く愛されてきた所以であろう。

 

32 Flying Lotus / You're Dead (2014)

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“You’re Dead”というなんとも挑発的なタイトルを冠したFlying Lotusの5thアルバムは、彼のキャリア史上最も有機的で”人間的”な作品だ。彼のアブストラクトなエレクトロニクス/ビートは鳴りを潜め、ジャズミュージックをより前面にフューチャーし、ThundercatやKamasi Washingtonといったお馴染みのメンツからなんとハービー・ハンコックに至るまで錚々たる顔ぶれを揃えた。同時に、Kendrick LamarやSnoop Dogg、さらにはFlying Lotus自身のラッパーフォルムであるCaptain Murphyを登場させるなど、ヒップホップへの接近も顕著である。

その意味で、”You’re Dead”はよく言われるように、”ジャズとヒップホップの融合”という地平を有していることは確かであり、この翌年にリリースされることになるジャズとヒップホップの融合の一つのモデルを決定的に作り上げたKendrick Lamar”To Pump A Butterfly”の前日譚として位置づけることができる。

しかしながら、本作における”ジャズとヒップホップの融合”の試みにおいてビートを変幻自在に操る彼の手腕が果たした役割を忘れてはならない。1stアルバム”1983”以降彼が追求し続けたビートへの探究心はーー本作では相対的に目立たないもののーー本作においても一つの軸となっており、それが断片的なジャズフレーズを一つの作品として編纂する際に重要な役割を果たしている。その意味で、ジャズとヒップホップが交差するその結節点に、エレクトロニクス/ビートがあったことを見逃してはならない。

 

 

31 Friendly Fires / Pala (2011)

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オルダス・ハックリーの小説『島』に登場する不思議なオウムが住む「パラ島」から取られた本作は、同小説が描くユートピアを体現したような作品となった。

前作における逃避的なクラブミュージックの要素はいくらか後景し、代わりによりダイナミックなホーン、パーカッション、シンセの生音的な要素が前面に押し出されている。それに伴い、各楽曲はよりクリアで洗練さを増したポップチューンへと深化。「黄金時代を感じるには生まれた時が遅すぎた」と80年代ディスコシーンへの憧憬を率直に歌ったLive Those Days Tonight、裏庭で見つけた古いカセットに思いを馳せるBlue Cassetteなど、過去のポップカルチャーへの尊敬の眼差しを歌っていることからも明らかなように、本作はクラシックなポップミュージックからの影響を強く受けている。

だが、本作はただ過去を憧憬するだけの回顧録的な作品では決してない。Live Those Days Tonightは「君の過ごした時間を感じることはできない」「君の大切な思い出に触れることもできない」と言いながらも、「でも、僕は生きる」「今夜その日々を生きる」と今を生きると歌っている。しかし同時に、実現することのないユートピアを夢見るという厭世的な心情も伺える。結局ラストトラックHelplessで「パラ」の物語は「僕はもう救いようがない」と悲しい結末を迎えている。その意味で、この"Pala"には、今を生きなけらばならないとわかっていながらも、ユートピアを夢見ずにはいられない、そんな人間の心情が描かれているのである。

 

 

PART3に続く。

 

TOP 50 ALBUMS OF 2010s [40-31]

40 Janelle Monae / Dirty Computer (2018)

39 Team Me / To the treetops (2012)

38 The Pains of Being At Pure Heart / Belong (2011) 

37 Disclosure / Settle (2013)

36 Drake / Nothing Was The Same (2013)

35 Arcade Fire / Reflektor (2013)

34 LCD Soundsystem / This is Happening (2010)

33 Foster the People / Torches (2011) 

32 Flying Lotus / You're Dead (2014)

31 Friendly Fires / Pala (2011)

 

(※2/11追記:サムネイル変更しました)

*1:https://tower.jp/article/interview/2011/04/19/77011

*2:マーク・フィッシャーは『わが人生の幽霊たち——うつ病、憑在論、失われた未来』において、これを「パーティー憑在論」と呼んでいる。