Joey Purpと新しいシカゴ
ディスクレビュー : Joey Purp / QUARTERTHING (2018)
Joey Purpの2年ぶりとなる2ndアルバム。前作iiiDrops同様フィジカルリリースは無しでストリーミングのみのリリースとなっている。
Joey PurpはChance the Rapperを抱えるSave Moneyのクルーの一員。このSave Moneyにはシカゴの気鋭の新人アーティストが多数所属しており、ほんの例を挙げればChance the Rapper、Nico Segal、Vic Mensa、Towkio等、近年注目を浴びているアーティストが集結している。実際にJoey Purpの前作iiiDropsではチャンス、Nico Segal、Vic Mensaといった上述のクルーメイトに加え、サマソニでのパフォーマンスが話題を集めたKnox Fortuneや12月に初来日が決まったばかりのSabaも参加しており、彼の実力をチャンスも高く評価している。
こちらはfeat. Chance the RapperのナンバーGirls@。とにかくミニマルでシンプルなトラックだがもろファレル。
さて、そんなJoey PurpのセカンドアルバムQUARTERTHINGであるが、基本的には1stアルバムの延長線上に位置していると言って良いだろう。全14曲37分というコンパクトさ簡素さも前作のスタイルを踏襲している。音自体も基本的にはミニマルでシンプルに仕上がっており、Girls@のセルフオマージュ?Elasticに代表されるような硬派で軽快なJoey Purp節が軸を成している。
他方、今作はそれだけにとどまらない。ファンクを前面に押し出したネプチューンサウンドに依っていた前作に対して、本作は音楽的幅の広さが認められる。一瞬挿入されているチップチューン的なフレーズにブレイクビーツが光るAw Sh*t、RZAをフューチャーしたGodbody Pt.2やPaint Thinnerといった壮大でダイナミックな楽曲陣、Boards of Canadaあたりのアンビエントなエレクトロニカを想起させる異色のナンバー"2012"などなど、その射程の広さは前作を軽く凌駕する。
チャンスがサマソニで見事なパフォーマンスを見せ、Nonameの新譜が話題となっている今、ここ日本でもシカゴ系ヒップホップへの注目は高まっている。オープニングナンバー24k Gold/Sanctifiedで彼はall they need is loveと歌っているが、こうしたメッセージはシカゴシーンに通じるものがあるだろう。又同曲後半のRavyn Lenaeの歌うブリッジ以降のゴスペル的曲展開には、チャンスの影を感じずにはいられない。
シカゴヒップホップの可能性の裾野を広げる気鋭の新人Joey Purp。これからの活躍に期待です。