ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

煌めき、色付く、僕らの世界ーDisc Review : Phoenix / Ti Amo

煌めき、色付く、僕らの世界
ディスクレビュー : Phoenix / Ti Amo (2017)

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 Phoenixというバンドはまさに理想のストーリーを経て成長してきた。それは1stアルバムにして大傑作を作り上げその後の活動に苦悩したThe Strokesとも、大ヒット曲が一曲だけひとり歩きしていき誰もアルバムを聴いてくれないと嘆くMGMTとも違った。彼らはあくまでも一歩ずつ、着実に、ファンを獲得し知名度を上げてきた。そんな彼らは、デビューから13年にして遂にコーチェラのヘッドライナーとして出演し、大歓声を浴びるに至った。

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<フジロック直前特集>LCD Soundsystem"All My Friends"のカバー曲まとめ

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さあ今日からフジロックだな。何度も言うけど俺は行けない。悔しくなんかない。いや、悔しいに決まってる。何と言っても29日、ホワイトステージのヘッドライナーは"LCD Soundsystem"。あの大名曲、"All My Friends"が苗場に響き渡るのだろう。フジロック組のみなさん、もし2日目のトリに迷っているなら是非LCD Soundsystemを。間違いなく、素晴らしい時間を過ごせます。今回はそんな名曲"All My Friends"の名カバーをご紹介。本家を見る前にこれらのカバーを聴けば、予習にもなるしテンション上がることも間違いなし。ではでは素敵な三日間をお過ごしください。

 

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21人の一匹狼が描く新たなスタンダードーDisc Review : 欅坂46 / 真っ白なものは汚したくなる

21人の一匹狼が描く新たなスタンダード
ディスクレビュー : 欅坂46真っ白なものは汚したくなる (2017)

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 彼女達は、深刻な自己矛盾を抱えている。CDを出せばチャートで一位を獲得、幾多のTV出演を果たし、ライブをやれば満員御礼、そんな日本のアイドル界、ひいてはJポップ界を代表する"みんな"のアイドルである彼女達が、「誰もいない道を進むんだ」と歌い、大衆、さらには社会への反発を露骨なまでに表現する。秋元康という「大人」が書いた詞を歌う彼女達が、大人に対する反抗を表現する。32人のアイドルグループに所属する彼女達が、孤独を歌い、他人志向型社会に中指を突き立てる。ーこれらの矛盾を抱えながら、いかにして襷坂46はここまでの圧倒的人気を獲得したのか。この1stアルバムには、そんな問いに対する答えが秘められている。私は、正直に言うと、欅坂46について、メンバーの名前や顔も全くと言っていいほどわからないし、TVの冠番組も知らないので、そういった欅坂46のエンターテイメント的な側面に関しては無知である。そのためこの文章はあくまでも彼女たちの音楽的側面のみを取り出した拙いものであるということを最初に断っておきたい。

"EDMの象徴"によるファンクへの転回が意味するものーDisc Review : Calvin Harris / Funk Wav Bounces : Vo.1

"EDMの象徴"によるファンクへの転回が意味するもの
Disc Review : Calvin Harris / Funk Wav Bounces : Vo.1 (2017)

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 確かに私は、サマソニにカルヴィンハリスがヘッドライナーとして出演することが決まった時、なんだカルヴィンハリスか。と肩を落とした。昨年コーチェラのトリで出演さえしたが、EDMの時代はもう終わったというのに、と思った。"Ready for the Weekend"は好きだったが、その後の"18 Months"を経て"Summer"による完全に流行りに乗じたEDMへの転向、さらには"This Is What You Came for"でのトロピカルハウスブームへの便乗。なんだか私はこの流行への執着があまり好きになれなかったのだ。しかし、こうした私のカルヴィンハリスに対する認識は間違っていたと認めざるを得ない。全てがこの傑作"Funk Wav Bounces : Vo.1"に帰結した、とするのは少し言い過ぎだろうが、間違いなく、これらはこの傑作への布石であった。

「分断した社会」を乗り越えるためにーDisc Review : Broken Social Scene / Hug of Thunder

「分断した社会」を乗り越えるために
Disc Review : Broken Social Scene / Hug of Thunder (2017)

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 このカナダのスーパーグループバンドがバンド名に"Broken Social Scene"という名前を付けたのは、まさに運命だったのかもしれない。二回の世界大戦とその後の冷戦を経験した私達は、グローバリゼーションという夢を描いた。しかし、その"夢"が単なる夢であることが露呈するまでにあまり時間はかからなかった。ハンチントンによる文明の衝突というテーゼが9.11を予測したとされ影響力を持ち、アイデンティティーによって世界は分断されるという説明が主流化した。最もそれは、単に世界で起きている対立を説明するのに楽だったからと言うだけで、なぜ文明間による衝突が起きるのかを説明していないのだが。