遅くなりましたが今年もベストソング/アルバム発表します。50位から1位まで、カウントダウン方式です。一アーティスト一曲までとしています。簡単なコメントも添えてみました。去年は背伸びをして目指せピッチフォークを合言葉に?各曲に長文の真面目なコメントを載せようと意気込みましたが、今年は断念して短文コメントになりました。うん、こっちの方が身の丈に合ってる。はい、ということでまずはトラック編から。ではでは。
(※左=アーティスト名 / 右=曲名)
50. boygenius / Me & My Dog
Julien Baker, Phoebe Bridgers, Lucy Dacusという若手でありながらUSインディーシーンの中心を担う女性SSW三人が集結。"Stranger in the Alps"の楽曲を思い起こさせるようなPhoebeの感傷的な歌声とバンジョーが演出する牧歌的な雰囲気が見事にマッチする佳曲。
49. girl in red / I Wanna Be Your Girlfriend
ノルウェー出身の19歳ssw。女性シンガーである彼女がoh Hannahと女性への想いを歌うってのがまた2018年的。映画The Woman in Redに由来するのだろうか、個人的にはgirl in redってネーミングもグッド。
48. Future & Juice WRLD / Fine China
今めちゃくちゃノリに乗ってるJuiceがFutureとコラボしたアルバムからのナンバー。両者ともメロディアスでメロウなトラックを得意とするという点で相性は抜群。
47. 亜咲花 / SHINY DAYS
ゆるキャン△opでお馴染みの一曲。まあ例によってモロI Want You Backな訳だが、私は好きですよ、この思い切り様。にしてもTLの反応を見ると、この手のアニメの視聴者層に音楽好きのおっさんが数多く存在することが確認できました(知ってた)。
46. TrySail / Wanted Girl
ノリで2ndライブを観に行っておいて本当に良かった(最近はチケ取れないっぽい)。今やスフィアの後継として認められ(つつ)ある彼女たち。やっぱもちょ天ナンスにはこういうアッパーで元気な曲が似合うよね。
45. Jorja Smith / February 3rd
サマソニでちらっと拝見しましたが21歳とは思えないオーラ、存在感に少々驚き。心地よいメロウなトラックに浮遊感たっぷりの幻想的な歌声がチルタイムを演出する好トラック。
44. Pusha T feat. Rick Ross / Hard Piano
5週連続リリースとなったカニエワークス第一弾としてドロップされたPusha Tとのナンバー。故ホイットニーヒューストンの自宅の写真をアートワークに起用し一悶着あったことでも話題に。にしても写真の使用量900万円って売る方も売る方だよな。
43. 小袋成彬 feat. 宇多田ヒカル / Lonely One
先ずもって現行のR&Bシーンを多分に意識したサウンドが見事。微細に変化する感情の姿や息遣いがリアルに迫りくる彼の歌声もこれまた素晴らしい。
42. Moses Sumney / Rank & Fire
Moses Sumneyのイマジネーションは無限大。複雑極まりないリズムの束が迫り来るかと思えば、エキゾチックで不安定なメロディーが鎮座する。それでいて不思議な中毒性を持った、色んな意味でスリリングな一曲。
昨年(2017)リリースの2ndが巷で話題となった平賀さち枝と今年(2018)リリースのアルバムが音楽好きの間で高評価を得たHomecomingsがコラボ。ポップで軽快なメロディが心地よい。晴れた日の午後に公園でスキップしながら聴いたら最高だろうな。
もう言いたいことは以前の記事で言い尽くしているのでここで改めて特筆することはないんですが一つだけ。星野源、歌良し、顔良し、演技良し、性格良しでその上「アイマスP」(これが一番大事)とか何者?
39. Friendly Fires / Love Like Waves
フレンドリーファイアがなんと帰還&来日。これだけで2018年は最高の1年になりました。「踊れるインディーロック」は新曲でも健在。今年は新譜待ってるよ。
38. Nipsey Hussle / Rap Niggas
インディーヒップホップシーンの雄Nipsey Hussleがついについにリリースしたフルアルバムからの一曲。G-Funkっ気満載満載のサウンド&PVがグッド。ちなみに彼身長191cmあるそう。
37. A$AP Rocky feat. Moby / A$AP Forever
未だ厨二病みたいな私はA$AP Foreverって曲名だけで惹かれてしまった。で、歌われているのはA$AP Mobのクルーへの愛。なんだかWu-Tang Foreverを思い出すなぁ。
36. Phoebe Bridgers + Noah & Abby Gundersen / Killer + the Sound
七分超の大作。Phoebe BridgersとNoah Gundersenの歌声のハーモニーに要注目。ただただ美しい。
35. Sophie / Immaterial
エクスペリメンタルエレクトロの新たな次元。バブルガム・ベースの大本命Sophieによるアンセミックな一曲。実は彼はJ-POPとの関係も深く、きゃりーや安室奈美恵との交流も深い。気になった向きは安室奈美恵&初音ミク”B Who I Want 2 B”を是非。
34. Jay Rock, Kendrick Lamar, Future, James Blake / King’s Dead
錚々たるメンバーが集結したブラックパンサーのOSTからの一曲。James Blakeがここにもフックアップされている。この身体に響く重低音は彼にしか出せない音だろう。
33. Franz Ferdinand / Always Ascending
新たなフランツのダンスアンセム。冗長とも言えるイントロでの焦らしから爆発する様式美は健在。来日はスタンディング会場だったら絶対行ったんだけどなぁ。
32. Cardi B, Bad Bunny & J. Balvin / I Like It
正直去年のBodak Yellowがピンと来なかった私ですが、#metooが盛り上がった社会的な文脈で見るとやっぱりCardi Bの功績を無視する事は出来ない。このI Like ItはJバルヴィン参加のラテントラップ。一時期YouTubeの広告でしょっちゅう流れてたよな。
31. Young Thug / Tsunami
Wheezy the wave young Wheezy the waveの流れるようなフロウが中毒的。Young Thug、名義を”SEX”に変更するとか言ってたけどどうなんだろう。あと気になるのはツイッターアカウント”Young Thug ひ“。この”ひ“は一体?
30. The Vaccines / I Can’t Quite
確かに最近のThe Vaccinesへの注目度はあまり高くはない。しかしながら、アコースティックな傾向を見せた2013年のEP"Melody Calling"に後期ストロークスを引用した3rd"English Graffiti"など、野心的な活動を続けている。このI Can't Quiteは、そうした中で初期のヴァクシーンズらしさが強く感じられる卓越したメロディーセンスが光るナンバー。1st以降離れていたファンは是非。
29. 4Luxury / 花ざかりWeekend
突然ぶっ込んですいません。こちらアイドルマスターミリオンライブ内のユニット4Luxuryの一曲。ハロプロ的な00年代を想起させるディスコティックでファンキーなナンバー。歌唱力の高さも特徴的。
28. J. Cole / KOD
若くして亡くなった友人を偲んだ傑作4 Your Eyes Onlyから2年、今作のKODはkids and drugs, king overdose, kill our demonsを示しているようで、ドラッグや金に溺れる中毒者の苦悩を綴っている。客演無しで、派手さがあるわけじゃないけれど、ストーリテラーとしてのJ. Coleの知性は本作でも健在。
27. ZHU / My Life
Tame Imparaをフィーチャーしたハウス×サイケデリックのナンバー。00年代後半のインディーロックの精神は、形を変え生き続けている。「インディーロックの死」をめぐる議論が湧き上がる昨今、Tame Imparaが果たしている役割はあまりにも大きい。
26. Chance the Rapper / I Might Need Security
こんなに美しい”fuck you”を未だかつて聞いたことがない。シカゴを、世界の音楽シーンの未来を担うチャンスが今年発表したシングル群からの一曲。「俺は活動家じゃなくて主人公なんだ」という冒頭のリリックが印象的。
25. Disclosure feat. Fatoumata Diawara / Ultimatum
昨年突然の活動休止を発表したDisclosureが新曲を引っさげてこれまた突然帰還。マリ共和国のミュージシャン、Fatoumata Diawaraをフィーチャーした本楽曲はアフリカンなテイストに仕上がっており、彼らの新たな方向性を仄めかす一曲となっている。
24. Petite Noir / Blame Fire
南アフリカを拠点とするシンガーPetite Noirによる新EPからの一曲。近年のアフリカの文化的潮流を多分に意識しつつ、彼自身のディアスポラとしてのルーツをめぐる苦悩(若い頃にコンゴ民主共和国を追われ、ベルギー、フランスに移住した経験がある)が表現されている。
23. Tom Misch / South of River
「ロンドンの若き天才」と称される弱冠23歳のTom Mischによる満を辞してのデビューアルバムからのナンバー。ファンキーなリズムギターにjazzyなギターソロ、そしてキャッチーなヴァイオリンのリフ、この三つの要素が見事に溶け合う様は圧巻。
22. Louis Cole / Weird Part of the Night
今のブレインフィーダーは本当にクリエイティブなアーティストが揃いに揃っているが、このLouis Coleもその一人。ファミコン、8bit風のチップチューンと卓越したドラムビートが唯一無二の世界観を作り上げている。
21. The Internet / Roll (Burbank Funk)
生音によるR&Bバンドとして現行ブラックミュージックシーンの先端を行くThe Internet。そんな彼らのニューアルバムHive Mindからの先行曲。独特のグルーブ感とクールでアーバンなサウンドがクセになる。
20. Yves Tumor / Noid
ワープとの電撃契約を結んだYves Tumorの移籍後初シングルとなったNoid。奇抜で謎めいた印象とは裏腹に、このNoidは美しいメロディとストリングスが特徴的なバンドサウンドになっている。曲の後半につれて次第にノイジーになっていく展開は胸熱。
19. Ariana Grande / thank u, next
thank u, nextには、次へ進む強さがある。アリアナの元カレ四人の名前を出しながら淡々と進行するこの一曲には、決して彼女のシリアスな一面は現れない。しかしマンチェスターでのテロ事件、そして恋人マックミラーの死と、あまりに悲劇的な出来事が彼女を襲ってきた。そんな出来事への悲しみをぐっとこらえて、アリアナは「次」を歌う。このメンタリティーは確かにSNS時代の産物の一つなのかもしれない。
18. Drake / Nice For What
2018年もDrakeの人気は相変わらず凄かった。こちらローリンヒルのEx Factorを大胆にサンプリングしたメガヒットシングル。好き嫌いはあるかもしれないが、暴力的なまでに大音量のビート、バスドラが個人的にはツボだった。
17. The 1975 / I Always Wanna Die (Sometimes)
初めてこの曲を聴いた時、これはまさに21世紀のNo Surpirisesじゃないか!とえらく興奮したのを覚えている。一時期、The 1975の『ネット上の~』とOK Computerの類似性をめぐる議論が盛り上がっていたが、私はこの二作品を関連付けて語るのは決して的外れではないと思う。ミレニアム世代/インターネット世代のリアルを、孤立と孤独を、シネマティックに歌い上げた名曲。
16. Jon Hopkins / Everything Connected
アルバムの核とも言うべき"Everything Connected"。10分越えの大作にして、それでいてダレることのない名曲。ジャケットが提示する自然のイメージとテクノの無機質な音が不思議とマッチする。
15. Tune-Yards / Heart Attack
ループマシンを駆使した独特なリズムにオーガニックなサウンドが特徴的なTune-Yardsの三年半ぶりの最新アルバムからのリードトラック。これぞTune-Yardsなワールドミュージック的に展開されるパーカッション、中毒性のある独特のメロディ、そして個性的なメリルのヴォーカルといった要素が詰め込まれた一曲となっている。
14. HiNDS / The Club
スペインはマドリードから世界を跨ぐインディーガールズバンドHinds待望の2ndアルバムから同オープニングトラックのThe Club。ローファイでキャッチー、それでいて力強いエネルギッシュさを併せ持つアンセミックな一曲。
13. 中村佳穂 / You may they
邦楽界で2018年一番の衝撃だったのがこの人。歌詞を取っても、歌を取っても、彼女の表現をめぐる卓越性、ユニークネスがずば抜けて優れていることが分かる。音の構成要素一つ一つを取ってみると、それはそれは複雑なリズム、音像で溢れているわけだが、曲一曲で聴くと不思議とまとまりを持ったポップソングに聞こえてくる。いわば「ポップネスの魔法」がここにある。
12. Vince Staples / Feel Like Summer
昨年リリースの金魚epが話題となったVince Staplesの新譜からの一曲。これまでの楽曲が割と評論家筋が好みそうなものが多かったのに対し、この楽曲はポップで”アガる”一曲となっている。にしても11月リリースでFeel Like Summerなんてタイトルをつけるのは、確信犯的な意趣を思わせる。
「僕が新たな時代のアンパンマン 僕が新たなスーパーヒーローアンパンマン」と新たなるスーパースター像を歌ったBTSの一曲。世界を救うスーパースターにはなれないけれど、自分を犠牲にして大事な人を救うことはできるーーそんなポストアメリカンヒーロー的なヒーロー像を提示した。
10. illuminati hotties / (You’re Better) Than Ever
Sarah Tudzinを中心に結成されたインディーロックバンドIlluminati hottiesによるデビューアルバムKiss Yr Frenemiesからの一曲。疾走感の溢れるピュアなガレージポップに一目惚れ間違い無し。このインディーポップ然とした可愛らしいPVもグッド。
9. Cuco / Dontmakemefallinlove
カリフォルニア出身の19歳による極上のベットルームミュージック。EP"Chiquito"からのリードトラックである本楽曲は、ローファイでメロウな一曲に仕上がっている。中毒性のある緩いポップさがクセになる。
8. Dirty Projectors / Break-Thru
跳ねるようなギターリフ、幾重に重なり合うコーラスワーク、そしてとびきり明るいキャッチーなメロディーライン。内省的な前作を経て、デイブロングストレスは音楽への愛を、歌うことの喜びを、見事に歌に込めた。フジロックで嬉しそうに歌うデイブを見ていたら、こっちまでなんだか嬉しくなってしまったよ。
7. Spiritualized/ A Perfect Miracle
オウム以降、日本において「スピリチュアル」という語は忌避されるべきもの、怪しいものとして認識されてきた。それが宗教的な衣裳を纏っていればなおさらで、神との合一だとか救いの教説だとかは徹底的に排除されてきた。スピリチュアライズドはそんなポストスピリチュアル時代に真正面からスピリチュリティーと向き合う数少ないバンドの一つだ。生死をさまよったという経験をヒリついた緊張感と共に描き切ったSongs In A&Eを経て、ジェイソンピアーズは生を、生きることの喜びを躊躇うことなく音楽に昇華した。ウクレレの優しい響きから始まるこのA Perfect Miracleは、ゴスペルクワイアが鳴り響き「君に完璧な奇跡ってやつを見せてやりたい」と歌う。僕らの最高の讃美歌だ。
6. Lil Xan feat. $teven Cannon / The Man
苦境に立たされたエモ・ラップシーンの再生は、この男にかかっている。精神薬「ザナックス」に由来するXan(ザン)の名前で活動する彼は、薬物問題に揺れるエモ・ラップシーンの中にいて、強烈なアンチ・ザナックスのメッセージを打ち出している。(Lil Peepの死因はザナックスの過剰摂取とされている。)このThe Manは、"God damn, god damn Lil Xanny the man"というやけに耳に残るフックが特徴的。
5. James Blake / Don’t Miss It
かつて引き篭もりであった彼は、ラップトップと出会い、「音楽を作ることで自らの思いを打ち明けること」、そして「自分を助けてくれるたくさんの音楽との出会うこと」を通じてダブステップの貴公子と呼ばれるまでの大スターへの道を上り詰めた。ここにあるのは、彼のこれまでの歩みであり、彼自身への忠告、メッセージでもある。今年リリース予定の新作への期待がうなぎのぼり中だが、彼ならやってくれるに違いない。
Travis Scottの魅力は、ただ音源を聴いているだけでは分からない。是非、ぶっ飛んだライブ映像を見て、彼の卓越したパフォーマンスに度肝を抜かれてほしい。近年のライブパフォーマンスの進化の一つの結節点がそこにはある。ドレイクをフィーチャーしたこのSicko Modeは、何度も転調を繰り返しながら進行するさながら10年代の"Happiness is a Warm Gun"。是非サマソニorフジで来日を。
3. 765pro Millionstars / UNION!!
正直、めちゃくちゃ良い曲だと思う。この曲を聴いていると、そんなどうしようもないことを言ってしまいたくなるほどに心が昂ぶってしまう。特に次々とキラーフレーズ、上質なリフ、メロディを出し惜しみすることなく畳み掛ける展開は圧巻の一言。ミリオンライブの5年間、そして765プロのこれまでがこれでもかと詰まった一曲。
2. Childish Gambino / This Is America
「カモンベイベーアメリカ」と歌ったDA PUMPとは対照的に、ガンビーノが歌ったアメリカは、目をそらしたくなるような現実であった。銃規制、黒人差別、ナショナリズムの伸長等々、彼はアメリカのシビアな「今」を4分間に詰め込んだ。トランプ以降、多くのポリティカルな楽曲が注目を集めているが、ガンビーノの特筆すべき点は、自身がいかなる立場にいて、自分の言説がどのような影響を及ぼすかに非常に自覚的である点にある。彼は自分がスターとして特権的立場にあることを決して忘れない。だからこそ、このThis Is Americaは高圧的な政治家のスピーチや胡坐をかいたコメンテーターのメッセージと違って、これほどまでに心に突き刺さるんだろう。
1. Saba feat. Xavier Omär / Stay Right Here
2018年はこの曲でした。Sabaに関しては特に大好きなラッパーというわけでもなく、来日公演も行ってないのですが、この曲に限ってはとにかくリリース以降ひたすら聴いてました。チャンス・シカゴ直系のゴスペル×ヒップホップで多幸感をひしひしと感じられ、昨年のSaba自身の成功を振り返った明るく希望に満ちた一曲となってます。スターとなったSabaが帰路の方途で故郷を偲びながらシカゴの未来を歌うーーそんな情景が浮かんできます。帰り道に夜空を見上げながら聴いていたらポジティブな心持ちになれました。ありがとう。
ーーーー
と最後だけ自分語りで締めつつ…
ということでベスト50でした。今年は洋楽も邦楽もアニソンもなにもかもごっちゃでランキングを作ってしまおうということで、ほんとに雑多なラインナップとなりました。なので個人的嗜好がこれまで以上に前面に出てきちゃってますがどうかお許しを。
てな具合でアルバム編に続きます。