ゆーすPのインディーロック探訪

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"Colors"のすべてーLive Report : Beck 2017 10/24 @ 新木場スタジオコースト

"Colors"のすべて
Live Report : Beck 2017 10/24 @ 新木場スタジオコースト

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 まさにベックの20年のすべてが詰まった一夜だった。"Devil's Haircut"で幕を開けたライブは、続いて"Black Tambourine"や"Think I'm in Love"、"Mixed Bizness"など、往年の名作からのリードナンバーを矢継ぎ早にプレイ。さらにデジタル配信限定であった隠れた名曲"Timebomb"を披露というサプライズを挟んで会場のボルテージを一気に上げたところでライブは中盤へ。ここでは"Que' Onda Guero" や"Go It Alone"といったアルバム"Guero"からのミディアムテンポのブルージーなナンバー、さらに"Lost Cause"や"Heart Is a Drum"といったアコースティックでスローテンポで組み立てられたナンバーが続く。そして終盤、ここで遂に新譜からの新曲群を次々と披露。この位置に新曲群を持ってきたということからは、新譜へのただならぬ自信を感じさせる。カラフルなVJと飛び切りポップな楽曲が溢れたこの終盤後は、"Loser"、"E-Pro"、"Where It's At"というベックの代表曲を三連打。正味1時間半ほどの公演であったが、非常に密度の濃い時間であった。

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 ベックの魅力は、広範な音楽にアプローチを試みながらも、それらを皆自分の音楽として再生産、いわばベックナイズ(?)を高いレベルで為すことができるという点にある。二十年以上のキャリアの中で、様々な音楽を行き来することで自らの喜怒哀楽を見事に表現してきた彼が、最新作に選んだのはど真ん中のポップミュージックであった。そしてそんなポップな新曲の数々は、旧譜からの代表曲に負けじと、いや、それ以上に会場を沸かせた。キャリアが長ければ長いほど、そしてそのキャリアが輝かしければ輝かしいほど、新曲で観客を沸かせるのは難しい。しかしベックはそれを簡単にやってのけたのである。

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 90年代のけだるさ、00年代のわけのわからなさ、そして10年代の分断と分化、そんな3つの年代を経験してきたベックが2017年に出した答えが"Colors"だった、とするならば、やはり私は、この"Colors"にこれからのポップミュージックの未来を託したくなってしまう。そんなもんは若手に託すべきだろうとも思う。20年以上のベテランミュージシャンに未来を託してもしょうがないだろうとも思う。でも直感的にこれだ!と思ってしまった私も確かにここにいる。しばらくはこの直感を信じて、これからのベックを、ポップミュージックを見守っていこうと思う。

 

 ちなみに"Colors"のディスクレビューは以下から↓↓よろしかったら是非!

indiemusic.hatenadiary.jp