ゆーすPのインディーロック探訪

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テイラー・スウィフトをも魅了する煌びやかなポップネスーDisc Review:Haim / Something To Tell You

テイラー・スウィフトをも魅了する煌びやかなポップネス
Disc Review:Haim / Something To Tell You (2017)

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 Haimの名前を聴いたのは何年ぶりだろう。1stアルバム"Days Are Gone"のリリースが2013年だから……もう4年も前のことじゃないか……いやはや時が経つのが早すぎる。まさに"Days Are Gone"。ーーこれが言いたかっただけですごめんなさい。ということで今回はHaimの4年ぶりの新譜"Something To Tell You"を紹介。

 

 Haimは2012年にEP"Foever"でデビュー、同楽曲がNME等様々な音楽誌から高い評価を受け、なんとBBCの期待の新人"Sound of 2013"の一位に選出。翌年2013年にリリースされたデビューアルバム"Days Are Gone"は全英アルバムチャートで一位を獲得するに至りました。三人姉妹から成る彼女達の特徴は何よりも80年代の雰囲気を感じさせるポップ、ロック、R&Bの影響を受けたどこか懐かしいサウンドですが、一方で、骨太でしっかりとしたバンドサウンドに裏打ちされ、見かけに反して本格的で、時折見せる歌であったりギターであったりで独特な新しさを見せてくれます。そんな彼女達はこの1stアルバムで大衆的な人気と同時にインディー畑における人気も獲得することに成功したのです。


HAIM - Falling

 2013年のEPより"Falling"。個人的にこのEPのジャケット写真がモノクロでカッコよくてお気に入り。"Days Are Gone"収録。

 

 そんな彼女達の2ndアルバムである今作です。非常に話題となりました。1曲目"Want You Back"ではピッチを高くしてサンプルを援用することで煌めくポップネスを振りまき、続く"Nothing's Wrong"では、心地いいヴォーカルとコーラスの掛け合いが素晴らしい。今作を通貫する彼女達の輝かしいポップネスは、基本的には1stアルバムと地続きとなっていて、4年前との大きな変化はありません。ただ一つ、4年前と変わった点を挙げるとするならば、柔軟性の変化、つまり、よりシームレスになったと言う点でしょう。確かに1stアルバムの時点でかなり広範なジャンルに希求する作品を作り上げたと言えるでしょうが、今作では"さらに"です。実際に、Giorgio MoroderからASAP Ferg、Taylor Swift等、様々なジャンル・年代のアーティストの支持を得た彼女らは、前述のポップネスはもちろんのこと、ある種の裏切りを忘れません。その一種の"裏切り"が顕著なのが、10曲目"Right Now"です。この壮大でどこか荘厳なサビと美しいコーラスは彼女らの新たなアプローチと言えるでしょう。


HAIM - Want You Back (Official Video)

アルバムのリードシングルにしてオープニングトラック"Want You Back"。Fleetwood Macの影響を感じさせる。


HAIM - Right Now (Audio)

こちらも"Something To Tell You"より"Right Now"。同アルバムの中でも際立って壮大な曲に仕上がっている。

 

 たくさんの女性アーティストがいる中でも、なかなかHaimみたいな存在は希有な存在で、これほどまでに広範なジャンルからの支持を集めているのにはやはり理由があります。そのヴィジュアルからは一見想像できないような音を鳴らすこの三姉妹がアメリカよりむしろイギリスで受けたこと、そしてそのイギリスから、あのThe Big Moonが生まれたこと、これらは偶然ではなかったと思えてなりません。