緩く、メロウに。
Disc Review : Rejjie Snow / Dear Anime (2018)
どうも、ゆーすPです。今回は期待の新人、アイルランド出身のラッパーRejjie SnowのデビューアルバムDear Animeを紹介します。久しぶりに今回はショートレビューです。(これに関してはBombay Bicycle Clubのフロントマンはデーモン・アルバーンになれるのかーDisc Review : Mr. Jukes / God First - ゆーすPのインディーロック探訪参照。当時、長ったらしいレビューばかりではなく、比較的マイナーなアーティストを紹介する短めの記事を書いていこうと考えていたのです。そして、これ以来全くこの「ショートレビュー」はやっていませんでしたので*1、「久しぶり」だ、ということです。)最近お堅い記事ばかりだったので、久々に緩くいきましょう。ということで、ではでは。
と上で「緩くいきましょう」と述べましたけれども、これは今回紹介する作品にぴったりの言葉かもしれません。ちょっと怪しげな感じのするジャケ写を見て、そんなの嘘だ、と思ったのなら、まずは7曲目"Mon Amour"を聴いてみてください。口笛でも吹きたくなるような軽快なシンセの音が、小鳥のさえずり、そして気の抜けたヴォーカルとともに聴こえてきます。
この"Mon Amour"に代表されるように、彼の音楽はメロウで素朴。PitchforkではN.E.R.D.とTyler the Creatorの影響が色濃いと指摘されていますが*2、個人的にはこのロートーンのチルさ・メロウさはChance the RapperやNonameといった、新シカゴ派?*3からの影響を強く感じました。
しかし、彼の音楽はヒップホップに留まらない、多様な性格を有しています。"Egyptian Luvr"では気鋭のエレクトロニカプロデューサーKaytranadaを迎え、"Pink Lemonade"や"The Rain"ではシカゴ・ネオソウルの旗手Cam O’biを迎えるなど、ヒップホップの枠を超えた多様なジャンルの要素を取り込んでいます。
こうしたヒップホップと他ジャンルのクロスオーバーは、近年は非常によく見られる傾向です。Kendrick Lamarがジャズとヒップホップのつながりを意識的なものにしたのが象徴的ですが、他にもA Tribe Called QuestがJack Whiteを迎えたり、James BlakeがVince Staplesとコラボしたりと、そのつながり方も多種多様です。そうした中で本作が、このつながりをより自然に、気楽に成し遂げたことで、シーンがクロスオーバーの傾向をより推し進めることに一役買っているのではないでしょうか。
ということで、今回はRejjie Snowのデビューアルバム"Dear Anime"を取り上げました。上に述べたように、今回は「レビュー」というより「紹介」の性格が強い記事になったと思います。これからはレビュー記事と紹介記事を意識的に差異化していくのもありかなと思ったり。ではまた。
*1:今見直したら、これ以外に一回だけやっていました。ちなみにこちら⇒EDMならぬ"A"DM?―Disc Review : Kommode / Analog Dance Music - ゆーすPのインディーロック探訪
*2:Rejjie Snow: Dear Annie Album Review | Pitchfork参照。
*3:ここでは、2010年代前半のチーフキーフを代表とするドリルミュージックを「旧シカゴ」とし、10年代中盤のChance the Rapperの活躍以降の平和志向のそれを「新シカゴ」としました。