ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

ELLEGARDEN復活によせてーDisc Review : ELLEGARDEN / DON'T TRUST ANYONE BUT US

ELLEGARDEN復活によせて

ディスクレビュー : ELLEGARDEN / DON'T TRUST ANYONE BUT US (2002)

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子供の頃、自分は何か特別な存在で、周りの大人たちとは違う何者かになれると信じていた。自分だけは違うとそう信じていた。

次第に私は世界を知った。世界には不条理なことが溢れていた。夢や希望を歌うあのアイドルは芸能プロダクションの操り人形にすぎなかったし、尊敬していたあの先生は授業と部活の二足の草鞋で死にかけた毎日を送っていた。

大人になって、私はそんな「周りの大人たち」がどんなに偉大な存在で、自分がそんな周りの大人たちの足元にも及ばない人間であることに気づいた。今でも「輪るピングドラム」の強烈なセリフは鮮明に覚えている。「きっと何者にもなれないお前たちに告ぐ」ーー私は何者にもなれないのである。

10代の頃に聴いていた曲を聞き返すという行為はそういう意味で、一種の自傷行為だ。夢や希望を信じることのできた無垢で純粋な自分との再会は、悪く言えば井の中の蛙で調子に乗った奴との再会でもある。正直言って、そんな奴に私は再会したくない。今思い出しても恥ずかしい。あの頃の自分に問い詰めたい。一体どこからそんな自身が湧いてくるのだ、と。

 

私が初めてエルレを聴いたのは、そんな青春真っ只中、中二の夏のことであった。いや、青春真っ只中ではなかった。私は本当に捻くれたコミュ障だった。青春時代の思い出は美化されるというが、そんなことは自分に限っては絶対にない。

そんな私にとって、音楽は自分が何か特別な存在であることを信じるための後ろ盾であった。いわゆる「みんなが知らない音楽を聴いてる俺カッケー」だ。音楽好きの皆が通る道だ*1。幸い?エルレは当時自分の周りでは全く知られておらず、私のどうしようもないプライドの後ろ盾の格好の的となった。当時の自分が「エルレってめちゃくちゃ人気で誰もが知ってるよ!」ってことを耳にしたら恐らく卒倒するだろう*2。知らぬが仏というやつだ。

何にせよ、当時の私の周囲の環境のおかげで、エルレをこよなく愛して聴くことができた。特に気に入って聴いていたのがこのDON'T TRUST ANYONE BUT USだ。なぜこのアルバムかというと、御察しの通りエルレのアルバムの中で相対的に知名度が低かったからだ。加えて「俺たち以外誰も信じるな」という厨二病感のあるアルバムタイトルに惹かれたのも一因だ。

しかし、そんな身もふたもない理由を別にしても、本作に非常に惹かれるものがあった。彼らの音楽は、不器用な僕らにとってのアンセムだったのだ。

 

Lonesomeにこんな一節がある。

Cause the world is lonesome enough to me the world is crazy enough to me
It keeps turning around and around and leaves me behind
だってこの世界は僕にとって孤独すぎて、この世界は僕にとっておかしすぎるんだ
世界は回り続け、僕は置いてけぼり

この歌詞が、当時の自分を捉えて離さなかった。先ほど「次第に私は世界を知った」と書いたが、私はその世界のおかしさを受け入れられなかったし、その世界の現実を認められなかったのだ。

The way you see it through

Your eyes could be different slight
君の眼を通して世界を見れば
きっと世界は別のものに見えるんだろう

そしてLonesomeのラストの歌詞はこれだ。今思えばみんながみんな色々な苦悩を抱えていたんだと思う。だが、当時の私にはそんなことを考える余裕も想像力もなかった。何も考えずに悩みなく生きているような人たち、世界に適合している人たち(表面的にそう見えるだけにすぎないが)が羨ましかった。だから、Lonesomeは、エルレの歌は、不器用な僕らにとってのアンセムだった。エルレの音楽は、教室の隅にいる僕たちに寄り添ってくれた。

 

You're not crazy

You're not unreal
狂ってなんかないぜ
君は確かにここにいる

Middle of Nowhereで細美武士はこう歌う。君は決して狂ってなんかいないよ、君はちゃんとこの世界で生きているよ、と。僕たちにとって、世界はあまりにも複雑で、世界はあまりにも狂っている。でも、それでもいいんだと彼は歌う。

I won't deny you

I won't ignore you
Do you hear me as sing here
俺は君を否定しない
俺は君を無視したりもしない
ここで俺が歌ってるのが聴こえるだろ?

 同曲のラストのフレーズは、細美武士が、エルレが、世界に馴染めない僕たちのためのバンドであることを端的に示している。彼らは無理に頑張れと背中を押したり、無責任に頑張ればいいことがあるよ、なんてことは歌わない。彼らは、うまくやれなくてもいいんだ、と、社会に馴染めなくったって俺らがいるぜ、と、僕らに居場所を提供してくれたのだ。

 

漫画「なるたる」に、こんなセリフがある。

自分が世界に当てはまらないと感じた時、どうすればいい?

世界のカタチにあわせて自分を削るか、自分のカタチにあわせて世界を削るか。

20年以上生きてきて、私は間違いなく「世界のカタチにあわせて自分を削っ」てきた。社会に生まれ生きる以上、世界による矯正を免れないことは事実だ。なんだか話がフーコーみたいになってしまったが、一方で「世界への違和感」はあってしかるべきなんだと思う。

確かに世界が嫌だからと言って世界を壊すことはできないし(テロリズムはまさにこの発想だが)、世界から逃れることはできない。それは事実だ。しかし、世界がどうもおかしいと思うことそれ自体は、決して忌避されるべきことでもないし、それどころか世界にとっては重要なことである。

しかしながら、最近の社会を見ていると、なんだかこの「世界への違和感」が不当に嫌われているような気がしてならない。

 

そんな時代に必要な音楽は、そんな思いを抱く教室の隅にいる僕たちを肯定してくれる音楽ではないだろうか。音楽にはそれだけの力が、孤独な僕たちを救う力があると私は信じている。

 

 

さて、ついについに、ELLEGARDENが復活しました。なんだかんだ言って、非常に思い入れのあるバンドなので、感慨深いです。

すでに復活ライブツアーは始まっていて、ついに今日、マリンスタジアムで大円団を迎えます。

ということで、幕張、行ってきます。と言いたいところですが、今日はエルレに行かずマイブラの単独公演に行ってきます…こんなブログ書いときながらなんつーことだ…笑

 

ではでは。

 

 

 

*1:だよな?????

*2:エルレなんて超がつくほどの大人気バンドだったはずなのに、私はなぜだかマイナーバンドだと信じていた…