ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

過剰の美学が生んだ大団円ーLive Report : MUSE 2017 11/14 @横浜アリーナ

過剰の美学が生んだ大団円

Live Report : MUSE 2017 11/14 @横浜アリーナ

f:id:vordhosbn:20171115215446j:plain

ー「装飾、壮大、うぬぼれ、プログレッシヴ・ロック。それが現代の音楽の風景をだめにする4つの罪だ。そして、イギリスのテインマスでレコーディングされた苦悩のロッカーたちミューズのセカンドとなる『Origin Of Symmetry』は、その4つすべてにおいて有罪だ。」

これはかつてLouis Pattisoが"Origin of Symmetry"を評して述べた一文である。確かに現代におけるロックは、できるだけ装飾を削ぎ落とし、"クールであること"こそが美学とされてきた。2001年のThe Strokesの誕生に端緒をなしたロックンロールリバイバルはそうした傾向を推し進めたし、2000年代後半のインディーロックの興隆は壮大さや自惚れとはおよそ無縁のものであった。

しかしMUSEは、そんな時代の趨勢を逆手に取って、"現代ロックにおける禁忌"を自らの強みへと転化した。ポストRadioheadという狭隘な文脈から脱し、過剰なまでの壮大さとシンフォニックな世界観を携えた2nd、3rdアルバムで独自の音楽性を確立した彼らは、21世紀最強のロックバンドと形容されるまでに成長を遂げたのである。

そんなMUSEの今回の来日は単独としては4年ぶり、フェス出演も含めれば2015年のフジロック以来2年ぶりの来日である。以前の来日がそれぞれ"The 2nd Law"、"Drones"という当時の最新アルバムを引っ提げたものであったのに対して、今回の来日はそうしたアルバム作品をフューチャーしたものでなく、目下の新曲は"Dig Down"のみ、という状況であった。

 

f:id:vordhosbn:20171115221731j:plain

そんな新曲"Dig Down"で幕を開けたライブは続く"Psycho"で早くも最高の盛り上がりを見せる。"Drones"ツアー以降定番となっている"[Drill Sergent]"の"Aye, sir"のオーディエンスとの掛け合いもしっかり決まり、ニューメタル的要素を併せ持ったグラムロックナンバーがアリーナのヴォルテージを引き上げる。そしてそのテンションをそのままに「ロック史上最高のベースライン曲」にも選ばれた"Hysteria"、この日は2ndアルバムから唯一のセトリ入りとなった"Plug In Baby"と鉄板曲が続き、"The 2nd Law : Isolated System"へ。こうしたプログレッシヴで荘厳な楽曲もMUSEの魅力の一つだ。

その後"Stockholm Syndrome"や"Take A Bow"といった近年のフェスでセトリから漏れていた楽曲が続いた。前者は2013年の来日時にはプレイしておりセトリにはよく入る曲の一つではあるものの、2015年のフジロックでは演奏されなかった。後者は2007年のツアー以来、なんと10年ぶりのパフォーマンスである。さらに"Madness"、"Dead Inside"、"Starlight"、"Time Is Running Out"と次々と代表曲を投下し、大量の紙吹雪と銀テープが舞った"Mercy"で盛り上がりは最高潮へ。ここで特筆すべき点は、最新アルバム"Drones"の曲が、こうもうまくライブの中に組み込まれていることである。過去の代表曲にも引けをとらない、いや、引けを取らせまいと、無理やりにでもオーディエンスを熱狂へと引きずり込んでしまう、この演出が憎めない。

そしてラストはいつもの"Uprising"と"Knights Of Cydonia"。"Mercy"であれほどの壮麗さを演出してもなお、そのあとにさらなるアンセムを投下できるのだからMUSEの楽曲層の厚さはすさまじい。そして1時間半ほどでライブは終了。あっという間の、濃厚な90分であった。

 f:id:vordhosbn:20171115221658j:plain

ライブの最後の三人を見ると、その顔には多少の疲れも見えた。以前のように、ギターを抱えながらステージを走り回り、歌のパートが始まるギリギリにマイクに走りこむマシューの姿は少なくなり、ギターを弾かない曲も増えた。「宇宙最強のライブバンド」と呼ばれるにふさわしい、圧倒的なステージングでオーディエンスを熱狂的な渦に巻き込んだ彼らであるが、"Starlight"でステージから降りてはしゃいだり、"Plug In Baby"のイントロでじらしてみたり、今回のライブはそんな一面がより際立って見えた気がした。彼らが愛される理由をそんな一面に垣間見た気がする。

 

Set List

1.Dig Down

2.[Drill Sergeant]

3.Psycho

4.Hysteria

5.Plug In Baby

6.The 2nd Law: Isolated System

7.Stockholm Syndrome

8.Supermassive Black Hole

9.Take a Bow

10.New Kind of Kick

11.Madness

12.Dead Inside

13.Drones

14.Starlight

15.Time Is Running Out

16.Mercy

17.The Globalist

18.Uprising

19.Knights of Cydonia