ゆーすPのインディーロック探訪

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バンドじゃないからできること、アイドルだからできることーDisc Review : バンドじゃないもん! / 完ペキ主義なセカイにふかんぜんな音楽を

バンドじゃないからできること、アイドルだからできること

Disc Review : バンドじゃないもん! / 

完ペキ主義なセカイにふかんぜんな音楽を (2017)

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 この上のコピーでもしかしてバンもん?って思ったあなた。大正解です。ということで、今回はいつもとは少し嗜好を変えて、今最も?熱いアイドル、バンドじゃないもん!の3rdアルバムをご紹介いたします。

 

・ 「バンドじゃないもん!」って?
 バンドじゃないもん!(以下バンもん)は、2011年に、バンド・神聖かまってちゃんのドラマーみさこを中心に結成されます。翌年2012年にはデビューミニアルバムを、2015年には2ndアルバム(フルアルバムとしては1stアルバム)をリリース。着々と知名度・人気を上げ、2016年にリリースされた6thシングル"キメマスター"が週間オリコンランキング5位を獲得し、以降2017年の6月現在の最新シングル"METAMORISER"までシングル5作品連続でオリコンランキングTOP10以内をキープしています。そんな中で発売された本作は彼女たちの人気曲キメマスターを含め、4枚のシングル曲を収録。オリコンでは週間四位を獲得し、バンもんの人気を決定付けるような作品となりました。
 今作でバンもんは多様なポップミュージックの要素を凝集させ、幅広い音楽性を得ることに成功しました。実際に多くの豪華クリエーター陣が集結し、その面子は、Q-MHz、HISASHI(GLAY)、NAOTO(ORANGE RANGE)、在日ファンク、ゆよゆっぺ、アカシックと広範なジャンルに至っており、アニメソング、邦ロックからファンクに至るまで、本作の多様性を形作っています。例えば7曲目"YAKIMOCHI"では、ハマケン節ファンクが曲を彩り、バンもんメンバーの可愛らしい声とこの極太ファンクが意外にも調和しています。一方オープニングナンバー青春カラダダダッシュではこれぞアイドルなアンセミックなナンバーを聴くことができ、音楽的多様性を感じられます。


バンドじゃないもん! / キメマスター! [MUSIC VIDEO]

彼女たちの代表曲"キメマスター"。アイドルらしいアップテンポな曲でライブでも鉄板の盛り上がり曲。


バンドじゃないもん!/「青春カラダダダッシュ!」

本作のオープニングナンバーでツアーの表題曲にもなっている"青春カラダダダッシュ!"。本作の印象を端的に示す一曲。

・"バンドじゃないから"カッコがつくのだよ
 一方でそんな多様な音楽性を持つ楽曲群を貫くのは"アイドル性"です。
 
 では、アイドルとは何か。この問いに対して彼女たちのグループ名、"バンドじゃないもん!"は非常に示唆的です。実際それは現在のシーンを見れば明らかですが、アイドルの定義は非常に曖昧で流動的です。アイドルにメタル的要素を取り入れ、"アイドルとメタルの融合"をテーマに世界的成功を果たしたBABYMETALや、アイドル×HIP-HOPで人気を博しているlyrical school、EDMアイドルとして活躍するSTEREO JAPAN等々、例を挙げればきりがありません。彼女たちは、その流動的で曖昧な枠組みである"アイドル"を採用することで、ポップミュージックを基礎として、"アイドル"という一貫した姿勢を土台に、ロック、エレクトロ、ヒップホップといった多様なジャンルを包括することが出来るようになったのです。"バンドじゃないもん!"が楽器を持ったアイドルとして出発しながらも、バンドであることを否定したことは、このこと、つまり、アイドルよりも比較的硬直的な"バンド"という枠組みを否定し、より流動的で幅の広い"アイドル"という枠組みを採用することを望んだからであり、それによって、"バンもん"はこんなにも幅広い音楽性を享受することができたのです。


バンドじゃないもん! / 「君の笑顔で世界がやばい」

1stフルアルバムから"君の笑顔で世界がやばい"。彼女たちの知名度を大きく押し広げた代表曲の一つ。バンもんの音楽性を決定づけた曲でもあります。

 

 こう考えてみると、今作のタイトル「完ペキ主義なセカイにふかんぜんな音楽を」の意味するところがぼんやりと見えてくるような気がします。彼女たちにとって、ジャンルやそれに付随する固定的な概念は自らの音楽性を限定してしまう障害であり、そんな固定観念よりも、音楽はもっと自由であっていいというメッセージ(ーそれがたとえ不完全であってもだ)なのではないか。そんなことを考えながら本作を聴くと、やはり彼女たちにとって”自由”というものが重要な一つのテーマなのではないか、と思わずにはいられないのです。