ゆーすPのインディーロック探訪

とあるPのインディーロック紹介ブログ。インディーからオルタナ、エレクトロ、ヒップホップまで。

心を揺さぶる―"It Gets More Blue"ーDisc Review:Girlpool / Powerplant

 

心を揺さぶる―"It Gets More Blue"

Disc Review:Girlpool / Powerplant (2017)

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 Lorde, Lana Del Ray, St. Vincentー近年こうしたインディー的価値観を擁した女性ソロアーティストの台頭が目覚ましい。さらに、Haim, Savages, The Big Moonといった新たな世代の女性バンドも台頭し始めている。今日紹介するのは、そんなこれからシーンを担う女性バンドの一つ、Girlpoolの新譜を紹介。
 

 

・静寂と激しさの二面性
 GirlsにもGirl Bandにも女性メンバーいなかったけどGirlpoolは大丈夫なのか…?確かにこの二つのバンドはgirlと謳っておきながら、全員男性だったけれども、その点Girlpoolは大丈夫。ちゃんと女性メンバーで構成されています(笑)ギター&ボーカルのクリオ・タッカーとベース&ボーカルのハーモニー・ティビタードのデュオ編成で、オリジナルメンバーにドラマーはおらず、実際に2015年リリースされたデビューアルバムまでの作品は全てドラムレスの作品となっています。彼らは2014年にEP"Girlpool"でデビュー。さらに翌年には初のフルアルバム"Before the World Was Big"をリリースし、各評論筋から高い評価を獲得します。実際にPitchforkでは7.8点を獲得し、"並外れた激しさと静けさが同居するアルバム"と表現されています。
"Before the World Was Big"から、"Ideal World"。クセになるけだるいリズム感と独特のメロディーセンスが光る。
・よりブルーに、よりエモーショナルに
 そんな彼女たちの2年ぶりとなる2ndフルアルバム"Powerplant"はドラムを導入することで、スカスカだった独特のグルーヴから、よりオルタナグランジ的な音像へとアップグレード。一方で癖になるメロディは健在で、本作のオープニングナンバー"123"に顕著なように、不思議とポップなメロディを聴かせてくれます。そして、特筆すべきは11曲目"It Gets More Blue"。静寂なイントロから始まりサビにノイジーなギターが爆発しエモーショナルな感情を駆り立てます。この感情を揺さぶるメロディーとギターは昨年のMitsukiの"Your Best American Girl"を彷彿とさせます。


Girlpool - It Gets More Blue

"Powerplant"より同アルバムリード曲"It Gets More Blue"。ファジーなギターが感情を揺さぶる。


Mitski - Your Best American Girl (Official Audio)

 2016年リリースの"Puberty 2"より"Your Best American Girl"。この曲ではMitsukiの日系アメリカ人として生まれた揺れるアイデンティティの内的衝動が叫ばれる。

 ということで今回はGirlpoolの"Powerprint"を紹介しました。12曲29分と短めですが、何度も繰り返し聞いてしまうだけの中毒性と耐久性を兼ね備えています。まずは"It Gets More Blues"だけでも。今後の彼女たちの活躍に注目です。